ことばの種(STさんのつぶやき)

標準語と方言のお話

先週に続いて、ちょっと真面目な「方言」の話題です。

 

日本語の標準語は意外に歴史が浅く、明治期以降の富国強兵策の下、義務教育や軍隊での訓練のため、全国民の間で通用することばが必要とされるようになり、東京方言をベースに、いわば人工的に作られたものです。

「全国民」、つまり特別な教育を受けたインテリ層ではなく、知的・社会的に平均的な階層をターゲットにした言語政策と言えます。

 

平易で、例外の少ない、規則性の高いことばですから、日本語学習初心者(子ども含む)にとって、学習しやすく、遣いやすいことばということもできるかと思います。

 

対して、方言はそれぞれの小さなコミュニティの中で共有される、人間関係や文化的背景、様々な「暗黙の了解」を含んだことば遣いです。

ことば自体を知っていても、そのコミュニティの「常識」を知らないと、遣いこなすのは難しいですね。

 

標準語に比べると、初心者泣かせ💦の言語と言えるでしょう。

 

例えば、「〜することができない」という表現1つをとっても、ここ、愛媛県の方言では、できない理由によって何通りもの言い方があります。

 

①「〜できん」

これは、ほぼ標準語と同じですね。

理由によらず遣える言い方です。

 

②「よー〜せん」

主に心情的な要因でできない時の言い方です。

 

③「〜られん」

外的な要因でできないことを表現します。

 

④「〜れん」

一時期、上一段・下一段・カ行変格活用動詞の場合に「ラ抜きことば」などと呼ばれ問題になったこともある言い方です。

実は、愛媛県松山市では昭和初期の頃に既に遣われていたという記録があり、これは全国でも最も古い記録になります。

比較的理由を問わず遣える言い方ですが、能力的にできないというニュアンスを含みます。

 

具体例として、「泳ぐ🏊」の場合…。

「よー泳がん」と言ったら、水泳そのものができないわけではなく、寒かったり、水が汚れていたりするために今は泳ぎたくない😩

「泳がれん」なら、水泳はできるし、泳ぎたい気持ちもあるけれど、遊泳禁止の場所であったり、お医者さんから止められていたりするから、今、ここでは泳がない。泳いではダメ❗️

「泳げん」または「泳げれん」と言うなら、多分、その人はカナヅチ🔨です。(「泳げれん」の方が、より「できない」度が高い印象です。)

 

このように、「泳ぐことができない」という意味のことば1つにしても、標準語に比べて、含まれる情報量がとても多いのです。

 

多種多様な事情を加味して、遣うことばを選択しなければならないことも、ことばの遅れのある子ども達が方言を遣いにくい理由の1つなのではないかと思います。

ことばの遅れと方言

発達障がいの子ども達は方言を話さないと言われます。

必ずそうだというわけではありませんが、確かにテレビ等に出演される、発達障がい当事者の方は、標準語で話されることが多いような気がしますね。

 

この理由はいくつかの説があり、代表的なものとしては、2通りあります。

 

1つには、言語習得のソース📕の問題。

いわゆる「定型発達」の子ども達の場合、周囲の人たちの実際のコミュニケーションから言語を習得していくことが多いかと思います。

ところが、発達障がいの子ども達は、周囲の人たちの行動や状況を参照することが苦手だと言われています。

そのため、家族やお友達の現実のやりとりよりも、テレビ📺や絵本などから、いわば「学習」によって言葉を習得する方が容易なようです。

テレビや絵本の登場人物は、標準語を話すことが多いですよね。

 

言い間違いや省略があり、その場限りで同じフレーズを繰り返すことが少ない、「生」のコミュニケーションに比べ、テレビや絵本のことばは、推敲を繰り返した、言わば完成形のことばであり、また、随時「リピート」することもできます。

発達障がいのお子さんだけでなく、ことばの習得が苦手なお子さんにとっては、より易しい「教材」と言えるかもしれませんね。

 

2つ目は、心的な距離の問題。

方言は、基本的にはある程度親しい関係で遣われることばです。

相手によっては「失礼❌」「なれなれしい❌」言い方になってしまう方言は、遣い方が少し難しいですね。

また、歴史的に人の流入の多かった地域の場合、敬意の度合いによっても方言と標準語の遣い分けがある場合もあり、方言使用のルールはより複雑です。

 

発達障がいの子ども達は、他者との心的な距離感を測るのが不得意だと言われます。

発達障がいでなくても、子どもは言語学習も人間関係も初心者です。

相手との関係によってことばを遣い分けるのは、なかなか難易度が高いですよね…。

 

誰に対しても、どの場面で遣っても「❌」でない標準語は、安心しできることばなのかもしれません。

 

個人的にはもう1つ、方言よりも標準語が扱いやすいと思う要素があるのですが、それについてはまたの機会に…。

「おべんきょう」は楽し♪

私は勉強することが大好きです。

学業優秀だったかというとそうでもなく、特に数学などは目も当てられないような成績でしたが。

 

…とは言え、本を読むこと、調べ物をすることが好きなので、わからないことや困ったことがあった時、その状況をまずまず楽しむことができるのは、私の大きな武器となっています。

 

さて、私がセンターでの「おべんきょう」で重視していること。

それぞれのお子さんの発達段階や特性にあった内容や難易度はもちろんですが、何より「楽しい💕」と思える課題を用意するようにしています。

 

就学前のお子さんにとって、現時点で教科学習の成績が優秀である必要はありません。

机に向かって、お話を聞いたり、読んだり、書いたりすることを「楽しみ💕」に思える下地を作ることができれば、首尾は上々。

特に、認知機能の凸凹のあるお子さんなら、ぜ〜んぶ❗️できなくても、何か1つ、「これは得意♪」というものがあれば、自信につながります。

この自信が、苦手なことを克服しようとがんばれる原動力になることもあります。

 

 

1つ、ご紹介。

これは、我が子が小学2年生の時の「自主学習」ノートです。

 

子どもって、タイムを計ったり、競争したりすると、「やる気」が燃え上がります🔥

それを利用して、「国語辞典の早引き対決」をしました。

国語辞典の使い方は小学3年生で学習するので、少し先取りの内容にはなるのですが、「楽しい💕」要素を取り入れることで、がんばることができました。

 

ただし、時間を計ると焦ってしまってイヤ💦というお子さんや、負けず嫌いで、負けちゃうと怒っちゃう🗯お子さんもいるので、注意してあげてくださいね。

個人的には、見え見えの手抜きで負けてあげるよりは、「大人VS子ども」だから…等、理由を説明した上でハンデをつけてあげる方がいいかなと思います。

 

*10日(月)は祝日だったため、本日11日(火)の更新とさせていただきました。

猫モブレ

「モブレ」とは、松山地方の方言で「〜まみれ」「〜だらけ」のような意味のことばです。

それと関係あるのかないのか、ちらし寿司のことを、「おもぶり」とか、「おもぶりご飯」などと言ったりします。

 

さて、「猫モブレ🐱」なのは、私のことです。

エプロンや靴下🧦の柄、髪飾り🎀などに猫モチーフをつけていることが多いです。

単に猫が好きなのもあるのですが、一応私なりに意味があって「猫モブレ🐱」ファッションにしています。

 

…これは、私の母に軽い失語症状があった時のことです。

物や人の名前を特に間違えやすかったのですが、たとえば私を呼ぶときに、「チコちゃん🐈(昔飼っていた猫♀)」「ピーちゃん🦜(昔飼っていたインコ♀)」、私の兄を呼ぶのに「サブちゃん🐕(昔飼っていた犬♂)」「チロちゃん🐩(更に昔飼っていた犬♂)」等々。

種族を越えて間違えるのに、性別だけは合っていました。

 

最近、ちょっと入院していた父も、入院後すぐのやや混乱している時、孫(男の子)の名前を「Mひろ(息子)」「Sぞう(甥)」等…。

こちらは全て身内の名前でしたが、やはり性別は正しかった…。

 

人名と性別が強く結びついているようなのです。

 

…と考えると、服装や髪型の似た女性が多い、センターや幼稚園、保育園の職員というのは、子ども達にとって、名前を覚えにくい→呼びかけづらい環境かもしれないな、と思うのです。

名前がわからないから、呼ばない、助けを求められない…というのでは、子ども達は安心して過ごせませんよね。

 

「名前を知らない大人」よりは、「あの猫モブレの人」の方が、親しみを持ってもらえるかな?というのが、私が「猫モブレ🐱」にこだわる1番の理由です。

 

だから、ある男の子に「猫の先生🐱」と呼びかけられた時は、「我が意を得たり」という気分でした。(今では彼も、ちゃんと名前で呼んでくれますよ♪)

魔法のことば

「でもダイジョウブ‼️」

我が子が2歳くらいだった頃の口癖です。

 

転んで痛かった🥲

ジュースをこぼしちゃった🥤

叱られちゃった…😞

 

イヤなことがあって、泣いたり怒ったりしそうなとき、

「でもダイジョウブ‼️」

と大人が声をかけたり、自分で言ったりすることで気持ちを立て直していました。

 

ただそれだけのことばなのに、不思議と効果てきめんの「魔法のことば」でした✨

 

私が教えたわけではないので、保育園の先生たちがいろいろな声かけを試す中で、

うちの子にヒットする方法を見つけてくださったのでしょうね(感謝🙏)。

 

センターの子ども達にも、いろいろな「魔法のことば」があります。

 

「アンパンマンみたい❗️」

「どんぐりさがしに行こう🌰」

「かっこいいね✨」

「どうやってするのか、教えて♪」etc.

 

ことばそのものではなく、誰かと「一緒にする」ことや、お気に入りのおもちゃなどが「魔法」の手がかりになる場合もあります。

それぞれの子ども、それぞれの発達段階に合った「魔法のことば」を見つけてあげたいですね。

 

「魔法のことば」は、成長の過程で効果がなくなったり、別のことばに置き換わったり…。変化していき、一生ものというわけではありません。

 

でも、こうして、自分の気持ちを切り替えるために工夫することそのものが、きっと一生ものの「魔法」になりますよ🧙