ことばの種(STさんのつぶやき)
アザラシは魚の仲間か?
最近、絵カードが気に入っているAちゃん。
箱から取り出したカードを机の上に広げ、右手で取り、左手に持ちかえ、スタッフに手渡します。
そのカードをもう1度右手で受け取ってから、1枚ずつ箱にしまいます。
一見すると単調な作業をしているように見えますが、絵を見て確かめ、ちゃんと上下の向きを揃えています。
また、Aちゃんなりの選考基準で、次に箱に入れるカードを選んでいるようです。
Aちゃん、今はまだ発語はなくて、大人の声かけにも確実に応じられるというわけではありません。
でも、このことイコール「わからない」ではないのです。
声かけだってちゃんと聞いてくれています。
その証拠に…。
カードのやり取り時、「いぬ、わんわん!」「カニ🦀、チョッキン」などと
描かれているものの名前を言っているうちに、スタッフのことばを期待して待つ様子が出てきました。
スタッフが黙っていると、「え、言わないの?」といった表情で不思議そうにしています。
少し遅れて名前を言うと、「えへへっ😄」と大満足。
絵カードの中には、絵の描かれていない文字だけのカードが2枚あります。
「これは説明書だね」と言うと、神妙な表情でじっくりと観察。
スタッフが「説明書」と呼ぶカードが2枚あることにも気づいていて、時々じっと見比べています。
本当のところ、どのくらい理解しているのかは、はっきりとは分かりません。
ただ、Aちゃん、それぞれの絵に、対応することばがあるらしいことには気づいたようですね。
そして、もう1つ、Aちゃんの気づき。
この絵カード、「うみのいきもの」と「どうぶつ」の2種類があり、「アザラシ」のカードは、
どちらのセットにも入っています。ふわふわ毛皮をまとったかわいい赤ちゃんアザラシです。
Aちゃん、サケやカツオ、イカ等の中にアザラシのカードが入っていることに違和感があるようで、
「うみのいきもの」の時には、手に取った後、必ず1度机に戻します。
そして、イルカやシャチを箱に入れた後に、ようやく納得してアザラシを箱に入れます。
まだ、Aちゃん自身もはっきり認識してはいないようですが、カテゴリー理解の始まりですね。
でんでんむしむし♪
センターでカタツムリ🐌が流行中なので、便乗して…。
今日は、お子さん達の言葉の発達とは少し離れたお話を。
デンデンムシ、カタツムリ、マイマイ、蝸牛(かぎゅう)…。
呼び方は色々ですが、これ、全部🐌のことですね。
STの領域で🐌蝸牛(かぎゅう)と言えば、「内耳(ないじ)」。
振動として伝わった「音」を、電気信号に変換して受容する器官です。
内部はリンパ液で満たされていて、カタツムリの殻(から)のように本当にぐるぐると
渦(うず)を巻いているんですよ!
音の高さを判断したり、受信した音に反応して、細胞そのものがダンスをするように動いて音を増幅したり…。
とても精密で神秘的な器官です✨
それから、ことばとの関わりで言うなら、柳田國男『蝸牛考』が有名です。
都(文化の中心地)で使われることばが、人々の移動や交流によって地方へと伝わっていき、
都では使われなくなった古いことばも、より遠く離れた地域には方言として残り続けます。
そのため、都(日本の場合は京都でしょうか。)からの距離が同じくらいの地域のことばには
似た語彙があるという説があり、柳田國男氏はこれを「カタツムリ」の呼び方の地域差によって論じています。
(『蝸牛考』の説明としては大ざっぱすぎますが、ご興味のある方は実際に読んでみてください)
松本清張『砂の器』で、この学説(方言周圏論〈ほうげんしゅうけんろん〉と言います)が
事件の鍵🔐となっていますから、推理小説ファンの方はご存知かもしれませんね。
ちなみに、こうして伝わっていくことばの速度はおよそ1km/年。
(井上史雄『日本語は年速1キロで動く』2003.7.1から)
これは、カタツムリの移動速度と同じくらいだそうですよ🐌
(でも、新型コロナの流行で、インターネットが劇的に普及した現在だとどうなっているんでしょうね?)
皆さんのおかげで…
センターの子ども達の中には、ちょっとした声かけの仕方(しかた)で
癇癪(かんしゃく)を起こしてしまう子もいます。
こうした子ども達って、「激しい」「気性が荒い」と言われがちです。
でも、そうではないような気がします。
ことばや、その他の刺激に対して人一倍デリケートな子のように感じます。
ここ、愛媛県の方言・伊予弁について、司馬遼太郎は「坂の上の雲」の中で、
喧嘩(けんか)には向かない、日本一「悠長な」ことばだと述べています。
ゆったり、のんびりしたことば遣いに慣れているので、
他地域のキツメに聞こえてしまう方言に触れたときには、少々びっくりすることがあります。
大人の声かけで癇癪(かんしゃく)を起こす子の気持ちって、ちょっとそれに似た部分があるのかなと思います。
言われていることがわからないわけじゃないんだけど、「ダメ」と否定されたことが強く印象に残って、
反発してしまう…。
なので、なるべく優しい声とことばを選んで、「○○してはダメ」ではなく、「△△しよう♪」と誘うことで、
うまく応じてくれることがあります。
センターでこうした工夫をしているうちに、大人同士のやり取りや家庭でも、
同じような関わり方が癖になってきました。
…すると、小学生の我が子がよく言うことを聞くようになりました!
無意識に、もう小学生なんだから、「こんなの言わなくてもできるでしょ!」
「どうしてちゃんとしないの!?」のような言い方になってしまい、
混乱させたり反発させたりしてしまっていたみたいです。
センターの子ども達のおかげで、我が子への対応を見直す機会になりました。
皆さん、ありがとう❤️
…でも、一切癇癪(かんしゃく)が起きないようにはできないし、
特にご家庭では、常にじっくり配慮して声かけするのも難しいですね。
お子さんが癇癪(かんしゃく)を起こすからといって、お子さんが悪いわけでも、
親御さんの関わり方が悪いわけでもないですよ!
お子さんがスムースに動ける方法を、一緒に試行錯誤していきましょうね。
走る!!ST!
何を隠そう、私は体を動かすことが大の苦手です😫
学生時代、走れば先生から「真面目に走れ!」と怒鳴られ(全速力なのに!!)、泳げば沈む…。
そんな私ですが、今は園庭で子ども達と一緒に走る、走る、走る!
本気の追いかけっこです。
STがどうして追いかけっこを?
それは、楽しく体を動かしながら、「ぼくのこと、おいかけて!」「ねえねえ、にげて♪」と遊びに誘うことや、
「タッチしたら交代だよ」という簡単なルールを理解するためのステップとして、ちょうどいいからです。
みんなで大笑い😄しながら走り回っていると、普段はお友だちの輪に入るのが苦手な子も、なんとなく加わって、
一緒に遊べることもあります。
そらチーム・にじチームの子ども達の多くは、まだ追いかけっこのルールを完全には理解していません。
だから、ただただお友だちやスタッフと走り回るのが楽しくて、ST、延々と追いかけ回すこともしばしばです。
そんな時、くじらチームのお兄さん・お姉さんがいると、大活躍してくれます❗️
「Aちゃん、タッチだよ。」「つぎはBちゃんだよ、いっしょにおいかけよう!」と声をかけ、手を引き、
小さなお友だちがルールに沿って遊べるように優しくサポートしてくれます。
走り疲れてヘロヘロしているSTの様子に気づいて、鬼役をタッチ交代してくれることもあります。
(なんて優しい!)
親御さんの体力づくりと、お子さんとのコミュニケーションに、追いかけっこ、オススメですよ。
とまと、ちょうだい!
ミニトマト🍅、大好きなお子さん、多いですね。
センターの給食にも、ミニトマトはよく登場します。
にじチームの給食での1コマです。
ミニトマトがだ〜い好きなAちゃん、自分のお皿のものを食べ終わると、
ジェスチャーで「おかわり、ちょうだい」と伝えてくれます。
スタッフのお皿のミニトマトを指差して、「もう1回」と「ちょうだい」のジェスチャーを続けることで、
「これ、もう1個、ちょうだい」と伝えてくれることもあります。
最近、Aちゃんと私が気に入っているやりとりです。
私:はい、トマト、どうぞ。1個、2個…○個あげるね。
Aちゃん:(もぐもぐ)いち…、(もぐもぐ)に…、(もぐもぐ)さん…。
発音は明瞭ではありませんが、指を立てながら「5」まで数えることができます。
「6」以上になると(片手の指では足りないので)、「5」の指を繰り返しながら、
「あれ?」という表情で首を傾げています。
…ということは、たぶん「6」以上も頭の中では数えることができているのでしょうね。
先日、ちょっと試してみたのが…。
「トマト、何個欲しい?1個?2個?3個?」
…Aちゃん、ちょっと考えてから、かわいいおててを「パー✋」にして、「お(5)!」と答えてくれました❗️
お皿の上のミニトマトは、5個でした🍅
数字の順番通りに追わなくても、ちゃんと数えることができているんですね。
おみそれしました…。
はっきりとした「ことば」が出にくいお子さんの場合、何も分かっていないように思われがちで、
意思確認をしてもらえる機会が少ないことがあります。
でも、「ことばでの発信が少ないこと」と、「わからない」ことは、イコールではありません。
時々、こうして質問を投げかけてみるといいかもしれませんね。
ちなみに、私のお皿のトマト🍅(もちろん、お箸をつける前の物ですよ)は、
Aちゃんのお腹に収まることが多いのですが、私は実はトマトが苦手なので、2人はwin-winの関係です❤️