絵カードの使用例
センターのお別れ遠足での、Aちゃんの
お話です。
明確なことばこそ出ませんが、大人の声
かけや、その場の状況などは理解できて
いるお子さんです。
普段は少人数のチームで過ごしています。
少しだけ心配していたのが、初めての場
所・活動は苦手で、大人数の中で座って
お話を聴くのも、得意ではない点です。
(大抵のお子さんはそうですね。)
いつもと違うメンバー、初めて行く場所、
初めてする活動…。
どうすればAちゃんの不安を軽減し、楽
しく過ごすことができるでしょうか?
用意しておいたのは、絵カードです。
Aちゃん、声かけでも理解できるのです
が、視覚的な提示がある方が、より納得
し、安心できるようなのです。
全体でのお話や、ゲームなどの説明の間
も、「おあつまり」の絵カードを握り、
「今はお話を聞く時なんだね。」という
ように、前に立つ職員とカードを見比べ
ながらその場で座って過ごすことができ
ました。
場所を移動する時にも、行き先や次の遊
びのカードを見ることで、落ち着いて動
けました。
これは絵カード使用の成功例の1つです
が、注意しておきたいことがあります。
「カードを提示する」は、その通りに
「行動できる」とイコールではないとい
うことです。
視覚的に示すことで、状況や求められて
いることが「分かる」、「安心できる」
ことが、カードの第一の目的です。
次のステップ=その行動が「できる」た
めには、「分かった」→「した」経験を
積んでいく必要があります。
やってみたら「いいことがあった(嫌
じゃなかった)」ということを繰り返す
ことで、声かけや求められている行動に
応じられるようになっていきます。
例えば、お返事をしたらほめられた、席
に座ったらおもちゃをかしてもらえた、
泣かずにことばで伝えたら、気持ちを聞
いてもらえた(思いが全部叶えられなく
ても)、待っていたらゲームを楽しめた
等々です。
大人が求める行動に応じたら嬉しいこと
があった」という経験を積み重ねること
が、子ども達の中に「できる」下地を
作っていくことにつながります。
冒頭のAちゃんの場合、今すること、次
にすることをカードで知らせることで、
安心して活動に参加できました。
でも、カードを見て分かったからといっ
て、必ずしも「できる」とは限りません。
それぞれのお子さんの発達段階に合わせ
て、一歩一歩「できる」に近づく支援を
していきたいですね。
また、「カードを見たよ」→「分かった」
→「でも、イヤなの!」ということもあ
るかもしれません。
その反応は、何がイヤなのか、どうすれ
ば「できる」のかを探るためのヒントに
なります。
カードを使って「できた!」とならなく
ても、そのお子さんにとっては力になっ
ているものはあるんですよ。