いろいろな「ことば」のあり方
数年前に「アイスバケツチャレンジ」で話題になったALS(筋萎縮性側索硬化症)をご存じでしょうか?
少しずつ手足が動かなくなり、症状によっては発音や発声が難しくなる場合もあります。
体が動かなくなっても意識や認知機能が保たれることが、この病気の特徴の1つですから、
会話ができなくなる前に、声以外でのコミュニケーション手段を確保することが重要です。
そこで、コミュニケーション手段として活用するのが、眼球運動です。
例えば、「YES」なら左を見る等のサインを決めたり、五十音表等を見ながら、
注視した文字を介助者に読み上げてもらったり…。
声にはならなくても、これらは大切な「ことば」です。
とはいえ、倦怠感や痛みがあったり、病状が進行していくことへの精神的な苦しさがある中で、
新たな手段を訓練していくことに、前向きになれない患者さんは多くいらっしゃいます。
そんな中で、訓練をがんばる原動力として、大切なものが2つあります。
1つは、伝えたい「思い」です。
ご家族への感謝の気持ちであったり、身のまわりの介助に関する要望だったり…。
2つ目は、その方法で「伝わる」という自信、「伝わった」ことによるメリットです。
新しい方法を試して、伝わりづらいとき、相手に遠慮して伝えることをためらったり、
「どうせ伝わらない」と諦めてしまったりする患者さんはとても多いです。
これらの2つのことは、ALS患者さんだけでなく、コミュニケーションを望むすべての人にとって大切です。
もちろん、言語習得期の子ども達にとってもです。
泣いたり、怒ったり(時には叩いたり、噛んだり)して、人に伝えたい「思い」が出てきたら、
次は「伝わる」喜びを経験させてあげましょう。
「こうしたかったんだね」「悲しかったね」などと、気持ちを代弁してあげることで、
「伝わった」「わかってもらえた」ということを、子ども自身が実感することができます。
そして、より適切な伝え方(泣く、怒るから、ジェスチャーや「ことば」)ヘシフトできるように、
導いてあげたいですね。
子ども達なりに伝えた時、「わかってもらえた!」「思いがかなった♪」という経験を積んでいくことで、
「ことば」は身についていきます。
何と言いたいのか読み取れない時には、状況から推測して「○○かな?それともこっち?」と
確認してあげたり、ただ相槌を打ってあげたりするのでも、十分やりとりの楽しさを味わうことは
できると思いますよ。